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TRPGのプレイをもとにして、小説をつくってみました。登場するキャラクター達は、全て実際の個人がプレイしています。


by fenreil

シナリオの作り方。

 テーブルトークを初心者の方に説明しながら行い、いっしょに数セッションした後に、その方々から「やっててすごく楽しい」という趣旨の言葉を頂けるのは、まさにマスター冥利につきる瞬間なのですが、それと同じくらいうれしいのが、さらに数セッションした後に、「私も友人をさそって、マスターをやってみたいのですが」と相談される時です。
 テーブルトークはどうしても「マスター」という進行役兼案内役が必要で、基本的には、だれかにテーブルトークを説明する場合には、その説明役の人がマスターをやる事になります。
 私がマスターのセッションに参加して頂いて、テーブルトークを「楽しい」と思って頂き、他の友人達にも「伝えたい」と感じてくれるなんて、本当にありがたい話です。
 一番手っ取り早いのは私がマスターのセッションにそのまま誘って頂く事ですが、学生さんはやはり学生さん同士という形もやりたいでしょうし、地理的に難しい方の場合はいかんともしがたいものがあります。
 そこで「無理だ」とあきらめるのではなく、自分がマスターになってこの楽しさを知ってもらおうとまで思ってくれる事はすごく嬉しいものです。

 さて、そうしてマスターをする方に聞かれるのは、「どうやってシナリオをつくったらいいのですか?」が定番でしょう。
 マスターをやる上で永遠の命題であり、正解が存在しない難しい質問です。
 とりあえずまず答えるのが、「映画や漫画、小説やアニメ、なんでも良いから自分が好きなストーリーを真似て、起承転結の流れを書きだし、それに必要な情報をそえる形で用意するといいよ」というものです。
 さらに付け加えるなら「自分でつくったストーリーも大事だけど、可能なかぎり、プレイヤーが考えた案に対応して、事態が変化してゆけるように、幅をもたせて作製すると、手間がかかるけれども、柔軟なシナリオになるよ」というものです。
 例えば、ある国のお姫様を魔族が誘拐にくる、という導入で、目の前で誘拐されてしまったPC達は追跡を開始、魔族のすみかをみつけて準備を整えて突入、いくつかの障害をクリアして姫を無事、すくいだす。という昔ながらのシンプルなシナリオを用意するとしましょう。
 PC達が充分に警戒をして、姫を効果的に警護していた場合、魔族が誘拐にいっても、それに失敗する場合があるでしょう。
 まぁ、マスターによってはムリヤリ成功させるような強引な方や、シーン制型のシナリオのように、そもそも「誘拐は成功する」というストーリーに「従って」プレイする事もあるでしょうが、PCが充分に対応し、それが妥当であるならば、誘拐は失敗する可能性があるのです。
 そうなった場合シナリオ崩壊でしょうか?
 いえ、決してそうはならないでしょう。
 そもそも「何故、魔族は誘拐しようとしたのか?」というパックボーンをマスターがきちんと考えていれば、本来の導入であった「誘拐」が失敗したとしても、それほどあわてる事なく、シナリオは進行してゆくはずです。
 「ある上級魔族の復活の為には姫の命が必要だから」というものの場合には、何度でも姫を誘拐に行くでしょうし、その姫がいる「国」というものをきちんと考慮にいれているなら、直接誘拐が無理となったら、毎日国民を何人も殺し、「この殺戮をとめたければ姫自ら我々の所へ来い」と要求するでしょう、その要求に応えないような姫なら、国民の支持はうしなわれ、国軍のモラルも低下、結局姫は孤立無援のまま魔族に襲われる事なってしまいます。
 かりにPC達がはりついて守り続けるとしてそれは「いつまで」なのでしょうか?
 一度の誘拐を撃退したからといって安心できません、魔族は何度でもしつこく、人間とちがってあきることも、あきらめる事も知らずに、さまざまな手段を講じて襲ってくるでしょう。
 いつくるかわからない恐怖に、人間は長期間耐えられません、衰弱した姫は、自らの心の平穏の為に魔族に身を委ねてしまうかもしれません。
 それをさっしたPC達は、禍根をたつために魔族の住処を調査し、逆にPC側からの強襲というシナリオもなりたってきます。
 こういう形になれば、本来用意していた導入とはずいぶんとちがいますが、大きなながれとしては、当初用意してあったとおりになっているのではないでしょうか。
 マスター権限とやらをつかって強引に話をすすめてしまうより、よほど自然な流れのように私は考えます。
 考えたシナリオは「何故おきるのか」「ででくるNPCの立場や考え方はどうなのか?」「PC達のまわりの環境はどうなのか」そういった様々なバックボーンをきちんと考えて用意しておく事で、ムリヤリ当初のストーリーを追いかけなくても、充分シナリオはすすんでいくものです。
 プレイヤーは運命を切り開き、マスターが想像もしなかった事態に物語りはすすんでゆくことになりますが、それをある程度「想定の範囲内」にしておけるようにシナリオをつくっておくと、誰もが驚くエンディングになったりして、想い出に残るセッションになったりします。
 もっとも、この方法は初めてマスターをやる方に話す事はありません。
 最初はマスターが考えたストーリーをいかに上手にプレイヤーに歩いてもらうか、といった話をします。
 なぜなら、この方法でのシナリオ作りは大変な労力を必要としますし、マスターとプレイヤーの双方に適度な信頼関係がないと、途中の調整が極めて難しいからです。
 しょぱなからひどく労力や手間のかかる方法を説明したって無駄が多いだけですし、まずは基本作業から伝えて、マスターとしての楽しみを覚えてもらう方がよほど重要です。
 手間をかけるのは、もっともっとマスター役を好きになってもらってでいいと思うからです。
 それにマスタリングの手法は十人十色でしょうから、例え私がこの方法がベストだとおもっていても、他の人にはもっと効率的な、その人にあったマスタリングの手法があるからです。
 私のシナリオの根幹にあるのは、プレイヤーの判断による、キャラクターの行動によって「運命は変わる」というもので、シナリオはあちこち細かく設定されており、まるで時刻表のように、あるいは日記や年表のように作製されており、PC達がなにも行動しなければ、バッドエンドで終わってしまいます。
 PC達がうごく事で、各タイミングで「おきるはずだった」出来事は、おきたりおきなかったりし始め、除々に未来が変化してゆき、最終的にはハッピーエンドまで、未来は変化していってもらいますし、マスターもその未来の為に、プレイヤーと相談したりさえします。
 もちろん、それと同時に、まるで二重人格のように、敵役としての私はいかにしてバットエンドするか爪を研ぐのです。
 何人もの自分がいるかのように様々な考えを自分の中で同時に処理、本来おこるはずだった未来が起きなかった場合には、シナリオに関係しているNPC達の立場や考え方を考慮し、それぞれ別々の行動をとってゆき、さらにPC達とのからみが増えてゆくのです。
 麻薬の取引をする予定だったAとBがいる部屋に、何かの事情でPC達が入ってくれば、その密談は中断され、次の密談の予定を立て直さなければなりません。
 Aは取引に積極的で、Bは罪の意識にかられながらも、金のためにはやむえずだった場合、さらにPC達がBに接触し、会話したり、何故Bには金が必要なのかを調べ、それを解決すれば、立派なシナリオになってきますでしょう?もちろんこの場合は裏切られたAが何かの組織の者だった場合は復讐がまっているでしょうし、Bを守るためにシナリオは続くかもしれません。
 それらも、各々バックボーンがしっかりしていれば、それほど慌てる事なく、推移してゆく事ができるはずです。
 こんな時刻表型シナリオ作製も、たまみにはいかがでしょうか?
 ただし、大変な苦労のわりには実りが少ない事も多々あるのであしからず(笑)。
by fenreil | 2006-06-04 14:07 | TRPGリプレイ